東京地方裁判所 昭和51年(ワ)10630号 判決 1978年5月29日
原告
テイアツク株式会社
右訴訟代理人
三宅正雄
ほか三名
被告
株式会社東京電子応用研究所
右訴訟代理人
小川吉一
ほか二名
主文
1 被告は、卓上電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機又はそれらの包装に別紙第二目録(1)、(2)記載の標章を附し、右標章を附した卓上電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機又はそれらの包装に右標章を附したものを販売し、販売のため展示し、又はそれらに関する広告(看板を除く。)に右標章を附して頒布してはならない。
2 被告は、その所有占有する別紙第二目録(2)記載の標章を附した卓上電子計算機、同目録(1)、(2)記載の標章を附した別紙第四目録記載の小型電子計算機を廃棄せよ。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は、第1、2、4項に限り仮に執行することができる。
事実
第一 申立
一 原告
(主たる請求の原因に基づき)
1 主文第1項と同旨
2 被告は、その所有占有する別紙第二目録(1)、(2)の標章を附した卓上電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機及びこれらに関する広告物(看板を除く。)を廃棄せよ。
3 主文第4項と同旨
(予備的請求の原因に基づき)
主文第1、第4項と同旨
との判決並びに仮執行の宣言
二 被告<略>
第二 請求の原因
一 原告の商標権に基づく被告標章の使用差止請求(主たる請求)
1 原告は次の商標権(以下、「本件商標権」といい、その商標を「本件登録商標」という。)の商標権者である。
出願日 昭和三七年四月五日
登録日 昭和三八年五月九日
更新登録日 昭和四九年一月二五日
登録番号 第六一一三四八号
指定商品 商標法施行令第一条別表第一一類 電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)、電気材料
商標の構成 別紙第一目録記載のとおり
2 被告は、昭和四三年二月九日に設立され、電子応用装置及びこれに関する機器類の製造販売等を目的とする会社であるが、昭和五〇年一一月ごろから、その製造にかかる卓上電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機及びその包装に別紙第二目録(1)、(2)記載の標章(以下、被告標章(1)、(2)という。)を附し、また右標章を附した卓上電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機又はそれらの包装に右標章を附したものを販売し、販売のため展示し、又はそれらに関する広告(看板を除く。)に右標章を附して頒布している。
仮に、被告が被告標章(1)を右商品又はその包装に使用していないとしても、被告は従来右標章をその商品に使用していたから、これを使用するおそれがある。
3 被告標章(1)、(2)は、次のとおり本件登録商標と類似する。
(一) 被告標章(1)について
(1) 外観について
被告標章(1)は、本件登録商標にその外観において類似する。すなわち、両標章はいずれも英文字四字をありふれた書体で横書きした構成からなり、四文字中語尾の一字が「C」と「L」と異なるのみであり、たしかに両標章につき対比観察をした場合、しかも時間をかけて冷静沈着に観察した場合においては、語尾の「C」と「L」を識別できるとしても、迅速を尊ぶ取引者、需要者間にあつては、直観的概括的に認識判断されるのが一般であり、「C」と「L」とは、それぞれ文字の右側に開放部を持ち、「L」の字の直立部分の上部を円孤状に曲げれば「C」の字に近くなり、「C」の字の上中部を直立状とすれば「L」の字に近くなることは見易いところであるから、わが取引社会においては、両文字は互いに紛わしく誤認され易い文字に属するものであり、しかも本件では英文字四字中三字までが等しく、語尾の一字のみが異なるにすぎないから、時と所を異にして離隔観察をした場合には、その差が無視され、誤認混同のおそれが強いものであり、後記のように別紙第三目録記載の標章が広く認識されたいわゆる著名商標であることを考えると、両標章はその外観において類似するものである。
(2) 称呼について
被告標章(1)は、本件登録商標にその称呼において類似する。すなわち、本件登録商標から「テイアツク」、「テアク」、「テイアク」、「テイーク」の各称呼が生じるところ、被告標章(1)からは「テアル」、「テイアル」、「テイール」の各称呼を生じるのであつて、右「テアク」と「テアル」、「テイアク」と「テイアル」、「テイーク」と「テイール」とは、英語読みの場合、日本人は語尾を必ずしも明瞭に発音するとは限らないことを考えあわせると、日本語としての称呼においてきわめて相紛わしいことは明らかであり、両標章はその称呼において類似する。
(3) 観念について
本件登録商標は、原告の前身たる東京電気音響株式会社の商号の英文名称の頭文字を羅列した造語標章であり、文字として格別の意義をもたないものであるところ、被告標章(1)は英語の辞書によれば被告のいうように「小がも」を意味する語とされているが、今日における我が国の英語の普及の程度からすると、本件登録商標の指定商品の取引者、需要者が右の語に接したとき、右のように理解するとは到底解し難いから、この標章も我が国の取引社会では造語で、文字として格別の意義を有しないものというべく、この点において本件登録商標と同様である。
(二) 被告標章(2)について
被告標章(2)は、左端の図形に続けて、その右側にTとE、EとA、AとLのそれぞれを互いに一個所にて接続させて表示した「TEAL」の四文字を配してなるものであるが、左端の図形は全体の中に占める面積も小さく、また図形自体が特別の観念を一般に与えるものではないし、更に「TEAL」の四文字は連続的に表示され、多少図案化されてはいるけれども、各文字は明瞭に看取できる態様で示されているから、この標章に接する者は、「TEAL」の部分に注意をひかれ、この部分を要部として捉えて記憶にとどめるものということができる。
(1) 外観について
被告標章(2)における左の図形部分は右のように全体の中に占める面積も小さく、また、文字として明瞭に看取できる「TEAL」なる四文字の部分が要部として捉えられるから、被告標章(1)の外観について述べたところと同一の理由で両標章は類似する。
(2) 称呼、観念について
被告標章(2)の要部は「TEAL」の四文字の部分であるから、被告標章(1)の称呼、観念において述べたとおり、両標章は称呼の点においても類似する。
4 被告の商品である卓上電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機が本件登録商標の指定商品に含まれることは明らかである。
5 よつて、原告は被告に対し、本件商標に基づき、被告が被告標章(1)、(2)を卓上電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機又はそれらの包装に附し、又右標章を附した右各電子計算機又はその包装に右標章を附したものを販売し、販売のため展示し、又はそれらに関する広告(看板を除く。)に右標章を附して頒布する各行為の差止めとこれらを組成する物件の廃棄を求める。
二 原告の不正競争防止法一条一項一号に基づく被告標章の使用差止請求(予備的請求)
1 原告の前身たる東京電気音響株式会社は、昭和三二年ごろからその英文名称の頭文字をとつて、別紙第三目録記載の商標(以下、「本件原告商標」という。)を創出し、これをテープレコーダーデツキに附して製造販売したが、その品質の優秀性と美麗なデザインのため、取引者、需要者間に急速に知れわたり、右商標は昭和三三年ごろにはすでに広く知られるようになつたところ、昭和三四年五月に同社と業務提携した東京テレビ音響株式会社もその製造するオーデイオ用機器等に同一商標を使用し始めたため、音響関係の機器について右商標はますます取引者、需要者の注目と関心をひくにいたり、東京電気音響株式会社は昭和三七年四月五日右商標につき、商標法施行令第一条別表第一一類の全商品を指定商品として商標登録の出願をし、昭和三八年五月九日登録番号第六一一三四八号をもつて登録された。そして、同社は昭和三七年一二月一月商号をテイアツク株式会社に、東京テレビ音響株式会社は同年一一月一五日商号をテイアツクオーデイオ株式会社にそれぞれ変更し、両社は昭和三九年一二月一日原告(旧商号は金山鋳造工業株式会社といい、昭和三八年一〇月一〇日テイアツクオーデイオ株式会社に、ついで昭和三九年七月九日テイアツク株式会社に商号変更した。)に吸収合併された。原告は、その後引き続いてその製造販売にかかるオーデイオ機器、計測機器の全製品について、本件原告商標をハウスマークとして使用し、結局この商標は、東京電気音響株式会社の商品を示す表示としてすでに昭和三三年ごろに、同社が東京テレビ音響株式会社と業務提携して以後は同社の商品たることをも示す表示として、また両社が原告に合併された後は原告の商品たることを示す表示として我が国内において広く認識されるにいたり、被告が設立された昭和四三年二月ごろには、特にオーデイオ機器、計測機器の分野はすでにきわめて著名になつていた。
2 被告は、前記第二、一(主たる請求)、2の項記載のとおり、被告標章(1)、(2)をその商品又はその包装に使用し、これを使用した商品や包装を販売等し、これらに関する広告(看板を除く。)にこれを附して頒布している。
3 被告標章(1)、(2)が本件原告商標と類似することは、前記第二、一(主たる請求)、3の項記載のとおりであるから、被告がこれをその商品に関して使用することにより、同じように電気機械器具ないし電子応用機械器具の範囲に属する原告の商品と混同を生じることはいうまでもなく、その結果原告が営業上の利益を害されるおそれがあることは明らかである。
4 よつて、原告は被告に対し、不正競争防止法一条一項一号の規定に基づき、前記第二、一(主たる請求)、5の項記載の被告の各行為の差止めを求める。《以下、省略》
理由
一原告が本件登録商標の商標権者であることは、当事者間に争いがない。
二1 被告は、昭和四三年二月九日に設立され、電子応用装置及びこれに関する機器類の製造販売等を目的とする会社であるところ、被告がその製造にかかる卓上電子計算機及びその包装に被告標章(2)を附し、またその製造にかかる別紙第四目録記載の小型電子計算機及びその包装に被告標章(2)を附したうえ、その型式名の表示の一部に被告標章(1)を附加して販売し、販売のため展示し、これらの広告(看板を除く。)に右標章(1)、(2)を附して頒布していることは、当事者間に争いがない。
2 ところで、原告は、被告が現に卓上電子計算機に被告標章(1)を附して販売等をしているが、仮に、現在、被告標章(1)を使利していないとしてもこれを使用するおそれがある旨主張するので検討するに、<証拠>によると、右卓上電子計算機には被告標章(1)が附されていることが明らかであるので、被告が被告標章(1)を使用しているものと推認しえないではないが、<証拠>に徴すると、<証拠>の各写真は、被告が従前販売等をし、現在はこれをさしひかえている卓上電子計算機を被写体としたものであることが推認されるから、同号証をもつて、被告が、原告主張商品を販売等するにつき現に被告標章(1)を附しているものと直ちにいうことはできないし、他に、被告が現に使用していることを認めるに足る証拠はない。しかしながら、被告が従前各種卓上電子計算機の一部に被告標章(1)を附して販売等したことがあることは被告の自認するところであるうえ、<証拠>によると、被告は被告標章(1)について、昭和四五年一二月一六日商標登録出願をし、昭和四七年九月三〇日出願公告決定がなされていることが認められることに徴すると、被告が卓上電子計算機に被告標章(1)を附して販売等し、またその広告(看板を除く。)に右標章を附して頒布するおそれがあるものと解するのを相当とする。
三そこで、被告標章(1)、(2)と本件登録商標との類否について判断する。
1 <証拠>によると、本件登録商標は別紙第一目録記載のとおり、「TEAC」なる英大文字四字を、ありふれた普通の書体で横書きした構成からなり、被告標章であることが当事者間に争いのない別紙第二目録(1)、(2)の記載によると、被告標章(1)は「TEAL」なる英大文字四字を、ありふれた普通の書体で横書きした構成からなり、被告標章(2)は左端の白抜き模様の入つた正方形の図形に続けて、その右側にTとE、EとA、AとLのそれぞれを一個所にて接続させて表示したやや図案化された書体の「TEAL」なる英大文字四字を横書きした構成からなつていることが明らかである。
2 ところで、登録商標と他の商標との類否判断は、その取引上の実情をはなれ、単に両商標の外形だけに着目して対比するのでは十分ではなく他の商標を登録商標の指定商品又はこれに類似の商品に使用した場合、取引者、需要者により商品の出所が混同されるおそれがあるか否かを考慮して判定すべき必要があるところ、その判定にあたつては、商標の外観、称呼、観念を全体的かつ離隔的に観察し、取引の実情に照らし、取扱業者や需要者の注意力を基準として判断するのを相当とする。
3 そこで、被告標章(1)と本件登録商標における称呼の類否を検討する。
(一) さきに認定した本件登録商標の構成に、我が国における英語の普及の程度並びに本件口頭弁論の全趣旨を総合すれば、本件登録商標の指定商品の取引者、需要者における取引の実際においては、本件登録商標からは、「テアク」、「テイアク」、「テイーク」、「テイアツク」の称呼が生じるものと解するのが相当である。
被告は実際の取引社会における本件登録商標の指定商品の取引者、需要者が本件登録商標について現実にどのような称呼をなしているかの観点からすると、本件登録商標の称呼は「テイアツク」、「テアク」であり、これ以外の称呼は生じない旨主張するが、<証拠>によると、「テイアツク」なる称呼は原告がこれを社名とし、製造販売するテープレコーダー等の商品を「テイアツクの製品」と表示して宣伝活動を展開してきた経緯が認められ、この事実に徴すると、本件登録商標の称呼のうち、「テイアツク」なる称呼が広く知られるにいたつたことが認められるけれども、本件にあらわれた全証拠によつても、いまだ右「テイアツク」なる称呼が取引上慣用されたため、他の称呼をもつて呼ばれることが全くない程の状態にあるものとまで認めることはできなく、前記証拠によると、本件登録商標の「TEAC」なる語は、原告の前身である東京電気音響株式会社の英文名称の頭文字をとつて創り出した造語であることが認められ、したがつて特別の観念を生じない英文字からなることを考えあわせると、本件登録商標からは、「テアク」(この称呼が生じることは前記のとおり被告自ら認めるところである。)、「テイアク」、「テイーク」の称呼が生じることがないとまで解することはできず、この点に関する被告の主張は採用しない。
また、被告は「……AC」なる構成の商標は「……アツク」と称呼されるのが通例である旨主張し、<証拠>を援用するが、同号称に示される「……AC」なる商標が「……アツク」と称呼されることがあることは認められるものの、右の称呼に限られるとするに足る証拠がないから、この点の被告の主張も採用しない。
更に、被告は、原告が登録出願した商標の連合関係からみると、原告は本件登録商標から「テイーク」の称呼が生じないことを自ら認めている旨主張するが、商標の称呼の決定は当該商標の構成と取引者、需要者の両側面から客観的に判断されるべきものであることは前記のとおりであり、商標出願者が如何なる称呼を予定していたかは関係がないから、この点の被告の主張も採用しない。
(二) 次に、さきに認定した被告標章(1)の構成に本件口頭弁論の全趣旨を総合すると、本件登録商標の指定商品の取引者、需要者層における取引の実際においては、被告標章(1)からは「テアル」、「テイアル」、「テイール」の称呼が生じるものと解するのが相当である。
もつとも、被告は実際の取引社会における前記指定商品の取引者、需要者が被告標章(1)について現実にどのような称呼をなしているかの観点からすると、被告標章(1)の称呼は「テイール」であり、これ以外の称呼は生じない旨主張するが、<証拠>によると、被告はテイール販売株式会社あるいは株式会社テイールなる別会社をもつてその製品の販売にあたらせ、その製品の広告ちらしには「テイール」なる表示をして宣伝活動を展開してきた経緯が認められ、右事実に徴すると、被告標章(1)から生じる称呼のうち、「テイール」なる称呼が比較的知られるにいたつたことが認められるが、本件にあらわれた全証拠によつても、いまだ右「テイール」なる称呼が取引上慣用され、ために右「テイール」の称呼以外の称呼をもつて呼ばれることが全くない程の状態にあるものとまでは認めることができなく、被告標章(1)が「小がも」を意味する英語ではあるものの、本件口頭弁論の全趣旨並びに現在の我が国における英語の普及の程度からすれば、前記指定商品の取引者、需要者が右標章から「小がも」を意味する「テイール」と発音する英語であると理解し得る者は殆んどないと解するのを相当とすることを考えあわせると、被告標章(1)が右「テイール」のほか、「テアル」、「テイアル」と称呼されることを排除するまでにはいたつていないものと解されるのであり、この点の被告の主張は採用しない。
(三) ついで、本件登録商標から生じる前記認定の称呼と被告標章(1)から生じる前記認定の称呼を対比するに、前記「テアク」と「テアル」、「テイアク」と「テイアル」、「テイーク」と「テイール」とは、いずれも最終音を異にするのみであつて、その余の音を共通にし、相違する最終音の「ク」と「ル」は共に母音「ウ」を含むものであつて語感が相近似しているうえ、日本人が英語読みをする場合、語尾を明瞭に発音しない傾きがあることを考えあわせると、これを全体として発音された場合にそれぞれ彼此相紛わしく商品の出所の混同を生じさせるおそれがあるものすなわち称呼において類似するものと認めるのが相当である。
4 次に、被告標章(2)と本件登録商標における称呼の類否を検討する。
(一) 本件登録商標から「テアク」、「テイアク」、「テイーク」、「テイアツク」の称呼が生じるものと解すべきことは前記のとおりである。
(二) 被告標章(2)から生じる称呼をみるに、右標章は前記のとおり文字と図形との結合からなるものであるが、これを全体的に観察すると、図形部分は全体に占める面積も小さく、被告は右図形の白抜き模様は、かもの飛んでいるところをモデイフアイしたものである旨主張するが、仮にそのとおりであつたとしても、右図形自体から前記指定商品の取引者、需要者において、特別の観念を生じるものとは認め難いうえ、「TEAL」なる英文字は前記のようにやゝ図案化された書体ではあるものの、その文字を明瞭に看取できる態様で示されていることを考えあわせると、右標章における中心的な識別力を有する部分すなわち要部をなすのは右「TEAL」なる文字部分であるものと解されるところ、被告標章(2)の右要部をなす「TEAL」から「テアル」、「テイアル」、「テイール」なる称呼を生じるものと解すべきことは前記のとおりである。
(三) 本件登録商標から生じる前記認定の称呼と被告標章(2)から生じる前記認定の称呼を対比するに、前記「テアク」と「テアル」、「テイアク」と「テイアル」、「テイーク」と「テイール」とはそれぞれ彼此相紛わしく商品の出所の混同を生じさせるおそれがあるものすなわち称呼において類似するものと認めるべきことは前記のとおりである。
5 以上のとおり、被告標章(1)、(2)は本件登録商標とその称呼において類似し、結局本件登録商標と類似するというべきである。
四被告の商品である卓上電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機が本件登録商標の指定商品に含まれることは、当事者間に争いがない。
五1 そうだとすると、被告が、その商品である卓上電子計算機とその包装に被告標章(2)を、別紙第四目録記載の小型電子計算機とその包装に被告標章(2)を附したうえ、その型式名の一部に被告標章(1)を附加して各販売等し、これらの広告(看板を除く。)に右標章を附して頒布する行為は、本件商標権の指定商品についての本件登録商標に類似する商標の使用にあたり、本件商標権を侵害するものであり、また、被告の商品である卓上電子計算機とその包装に被告標章(1)を附して販売等し、更にこれに関する広告(看板を除く。)に右標章を附して頒布することも本件商標権を侵害する行為であり、被告にそのおそれがあるものと認められる。
2 よつて、原告の本件商標権に基づく、被告が被告標章(1)、(2)をその商品である卓上電子電子計算機、別紙第四目録記載の小型電子計算機又はそれらの包装に附し、これを販売し、販売のため展示し、又はこれらに関する広告(看板を除く。)に右標章を附して頒布する行為の差止めを求める請求は理由があるからこれを認容する。
3 原告の本件商標権に基づく、被告の所有占有にかかる被告標章(2)を附した卓上電子計算機、被告標章(1)、(2)を附した別紙第四目録記載の小型計算機の廃棄を求める請求は理由があるからこれを認容するが、被告標章(1)を附した卓上電子計算機の廃棄を求める請求は、本件商標権の現在の侵害がないから失当であり、またこれらの商品に関する被告の所有占有にかかる広告(看板を除く。)の廃棄請求は、被告が卓上電子計算機の広告に被告標章(1)を附して頒布するおそれがあるにとどまり、現に被告標章(1)を附した右広告を被告が所有占有するものではないことは、さきに述べたところから明らかであるので、右広告を現に所有占有することを前提とする請求は失当というほかはなく、また卓上電子計算機の広告に被告標章(2)を附し、別紙第四目録記載の小型電子計算機の広告に被告標章(1)、(2)を附していることはさきに述べたとおりであるが、右広告に被告標章(1)、(2)を附しただけではいまだ商標の使用にあたらず、したがつて本件商標権の現在の侵害を構成しないから、その廃棄請求は失当というほかはなく、いずれも棄却する。《以下、省略》
(秋吉稔弘 伊藤博 塚田握)
第四目録
(1) 80―30ホテルマスター
(2) 80―30S/1マスター
(3) 80―20B/Sマスター
(4) 1000SSセルフマーカー